「……アタシそろそろ次の神と交代の頃だから機嫌いいけどさー、さっさと済ませたいんだけど」
「あーい。ごめんごめん。もう一回美少女見ときたいのよ」
 キョロキョロすると、すぐに重そうな十二単と綺麗な薄い色の髪が目に入る。
 私は感覚がないせいで(ドジだからじゃないやい)何度か転びながら香子さんのところまで行く。
「香子さん、私先行くねー」
「うん」
「あははー。香子さんの相手の人早く来るといいねー」
「うん」
 きゃーん、香子さんってば顔つきも挙動も仔犬じみていてかーわいーい。ということなので、目を楽しませてくれたお礼にちょっと余計なことを言う。
「男の人はね、大体馬鹿だから、にこにこしてひっついておけば騙されてくれるよー」
「騙す?」
「ふふ、騙されてもきっと本望さ」
「ん? ……んー」
「まぁとりあえず、捕まえておきたい人にはきっちり甘えましょう!」
「……わかった」
 眉間に若干の皺を寄せつつも、この子は素直だ。
「もういいわよね次期梟」
「はいはい」
 七階まで、私は梟に生まれ変わりに行く。不満はない。人間じゃないって辺りが特に気に入った。
 死後のこの世界が本物かはともかく。
 七階まで来て、今度こそ終わりだ、と強く念じる。どんな梟かなぁ。ヘドウィグみたいなのかなぁ。そういやハリポタってラスト知らんなー。
 どうでもいいことばかりでも癪なので、扉が閉まる直前に、私は担当の神さんに言う。
「ありがとね。あと次期神によろしく」

相手でも神でもない人でも香子さんに会えるかとかは知らない。

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