二人席

【喫茶】

「有馬クンやい、悪だくみしてるときくらいもっと柔らかいこと言えないのかね」
 そんな風にいちゃもんつけたのはいつだったか。確かまだ出会ってほんとうに間もない頃だったはずだ。
 場所はどこだったか忘れたが、二人、コーヒーを飲みながら向き合って話していた。
 言うだけ言ってコーヒーを飲む私に、彼はゆったり見える動作で首を傾げて、唇を薄く開いた。
「よくわからないけど、態度を改めた方がいいのか?」
 私はその答えを聞いて初めて、自分が手を組んだ相手が所謂『天然』に該当する性質の持ち主だと認識した。
 我ながら鈍かったというかなんというか。
 しかし、そう簡単にしっくり来なかったということでもある。まさか『死神』とまで呼ばれる程の喰種捜査官がそんなやつだなんて! 大抵は、思いもしないだろう。
 私はこみ上げる笑いを半分位に抑えながら、揶揄を省いて、本当に必要かもしれない提案だけを言葉に乗せた。
「『伝達』だけするんじゃなくて『会話』も弾ませないか、ってこと。円滑にコトを進めるためにもさ。ほら、どいつもこいつも会食だなんだってやってるでしょ?」
 言いながら、笑っているせいで冗談と受け取られるかもなあと過ぎったが、彼は少し考え込んで、大真面目に頷いた。
「確かに。CCGでもよく聞く考えだし、試してもいいかもしれない」
 私はといえばその凪いだ目の真剣さが余計にもうダメだった。つまり今度こそ喋るのを諦めてひたすら声を立てて笑ってしまった。

 大笑いしておいて何だったが、私たちは一度だけ、食事を共にしてみたことがある。
 互いに多忙な身であるため、二人でテーブルにつけたときにはあのつまらないいちゃもんをつけてから二ヶ月は経っていた。
 しかし、これが何とも盛り下がった。無理は良くない。色んな意味で。
 まず、いくら私でも向き合っての食事は少々気恥ずかしかった。自分はイケる方だと思っていたのだが……真正面に人がいて、冷静に、というのがなんかダメだった。
 彼の方も、喰種の食事はきっと積極的に目にしたいものでもなかっただろう、元々寡黙らしいが更に口が重かったので、完全なる失策だ。
 私が借りている部屋、というロケーションしか選べないのもあまり効果的でない気はしたが、結果としてはそれ以前の問題だった。
「……これはやめておこう」
 どちらが言い出したかは覚えていないが、二人きりの満場一致だった。多分私のお喋りな赫子が絶好調でもハイテンションに同意見を囀っていたことだろう。
 私たちは失敗も鑑みて、しばらくは単に情報伝達だけしておくことにした。
 すると今度は段々省略気味になって行き、彼の頭髪に白髪が見つけられるようになる頃には『相手の顔を見て何も言う素振りがなければUターン、話しても二、三言で帰る』といった極端なことになった。何せお互いの意図や動向だなんて、自分で知って考えれば理解に難いものではなかったのだ。その場のリスク回避だけ考えるなら、接触は避けるべきとも言えた。
 ただ、いつかは事前の情報交換や打ち合わせが必要なくらい大きな動きも起こす。下手に通信記録を残すのも危うい以上、私たちは時々会っては、大きな動きの予定や前触れの有無だけは確認していた。
 本当は彼には聞いてみたかったことがあるのだけど…………向き合ってコーヒーを飲むことさえない日々の中、機会を拾うことはなかった。
 そんなある日、彼はなんの前触れもなく、次に会う予定を前倒しにして私の部屋にやってきた。



【ランチに誘う】

「エト、急に悪い」
「おやおや、有馬っちじゃない。この間会ったばっかなのに珍しい。どしたどーした?」
 今までなかったアポ無し訪問に、私は玄関先でわざと明るい調子を見せる。露骨な警戒体制による苦情申し立てのつもりだ。
 突然の来訪者は鞄を開けて極秘と書かれた紙束をちらりと見せた。
「資料が早めに手に入った。それと、調査の日取りが早まりそうだ。丁度約束してた日は地下にいる」
 事情に納得して招き入れつつ、私は、こうやって予定が狂うときは訪ねやすい拠点である我が城が密会の舞台になることも増えそうだなぁなんて考える。
 後に見事的中する予感はさておき、私が資料を見ながら適当に促すと、彼は大人しくソファに収まった。今日は随分と、時間に余裕があるようだ。
 折角なので作業用にたっぷりいれてあったコーヒーの残りを温め直してローテーブルの上に出す。これでも来客をもてなすくらいの常識はあるのだ。
「さてと」
 私もソファに、珍しいお客の隣に収まった。それからまるでいつもそうしてきたかのように勝手に鞄を漁って資料を取り出すと、じっくり目を通す。
 彼の方も、最初こそコーヒーを飲みながらこちらを窺っていたものの、十分もしないうちにジャケットを脱いで、何故か遺書を取り出してペンを取っていた。
「そりゃ何だい」
「遺書だよ。皆書くんだ」
 どういうことなのか、というのを含めて聞きたかったのだが伝わっていないようなので、私は「ふぅん」とだけ返して資料に戻る。
 目を通し終わっても、彼は白紙を前にジッとしているばかりだった。いや、ネクタイまで外しているところを見るに、ずっとそうしていたわけではなさそうだが。
「ところでキッションション」
 私がふざけた態度で声を掛けると、隣の捜査官は眼鏡の向こうの目を些か見開いて、
「……ギッチョン?」
 と返してくる。その表情は五つも年上とは思えないくらいに幼く、無垢にさえ見える。いや、もしかしたら本当にどこか無垢なのかもしれない。
 私は急に弟でもできたような気持ちになって、いたずらに、背の高い死神を抱き寄せた。
 子供をあやす保母さんを真似て、その肩をぽんぽんと叩いてやる。すると、何を思ったか彼は私の小さな体躯を抱き返してきた。
 一瞬、弱さを抉って相手をコントロールする手法を使うときのように、優しく遺書に言及したくなった。
「…………」
 でも、やめておく。
 同じ理想を目指す遠い相棒にわざわざそんなことをしたら『私はとても弱いです』と肌に刻むようなものだ。
 しばらくしてなんとなく力が緩んで、私たちは自然と抱き合うのをやめる。そしてそのまま何もなかったようにコーヒーを飲んで、私はノートパソコンを取り出すと執筆を開始した。
 隣の彼は何を思ったのか、遺書を仕舞うとソファにもたれ掛かる。寝るのか?
 まあ、静かなままなのは悪いことじゃない。私はキリがいいところまでぱぱぱと書き進めておいた。所要時間一時間半程度。
 ファイルを保存し伸びをしながらふと横を見ると、画面をまじまじと眺めていた視線とぶつかった。
 流石に私も妙に思い、ノートパソコンを閉じながらそいつに尋ねる。
「随分長居だけど? 暇なの?」
 すると、答えはとつとつと返ってくる。
「……暇、かな。作ったんだ、暇を。前言ったきり『会話』があまりないままだったのが気になってて」
 私は一瞬面食らって、でもすぐに気を取り直してツッコミを入れておく。
「それは先に言うべきじゃないの?」
 ややあって、生まれてこの方ボケしか担当したことがなさそうな男は真面目に言った。
「あまりに普通のことみたいに一緒にいられるから、つい」
 私は変な笑いを形づくろうとする表情筋を諌めようとして、口元を軽く痙攣させる。
 なんて最高で、最低な居心地だろう。
 私の無言をどう取ったのか、彼は続けて語る。
「いつも会うときも、大抵目を合わせるだけで事足りるからあまり話さないし……俺たちはやっぱり、同じ鍋でも囲まない限り喋らないのかもしれないな」
 そして彼はふっと表情を緩めて私を見つめる。
 視線が合い続けている。
「……何もないけど、ゆっくり話そっか」
 私は座り直して、出来る限り体ごと彼の方を向いた。彼も倣うようにそうする。
「うん」
 彼の返事を聞いてから暫く。
 私たちは暇にあかして、当然のことのように唇と唇を重ねた。
 それをきっかけにしてやっと、私は聞きたかったことを口にする。
「アンタ、喰種とは喋らないらしいじゃない」
「うん。……え? エトたちとは事情が……」
 彼は見事誤解してくれるが、私は小さく首を振るだけでそのまま続ける。
「何であのとき、私に理由なんか尋ねたの?」
 あのときというのは、初めて会ったときのことだ。私も今よりすこし幼く、彼もまだ真っ黒な髪をしていた頃。
 質問の答えを用意するまでの間を埋めるように、彼は私に数回触れるだけのキスをする。眼鏡邪魔だな。
 勝手に眼鏡を取る私から視線を外して、彼はぽつりと前置きした。
「怒らないで聞いてほしいんだけど」
「保証はしかねるなァ」
 本音で意地悪を言いつつ、私は手慰みに彼のシャツのボタンを上から外す。
 三つくらい外したところで、彼は私のあご先から耳にかけてを指でなぞりながら、そのまま手で包む。そして親指で頬を撫でながら説明する。
「……半人間の出来損ないとして、半喰種のお前は美しく完璧にさえ見えた。だから、あんなに荒れてるのがちょっと不思議だったんだ」
 私はちょっとキレそうになりながらも、少しだけ待ってみる。
 彼の指はかさかさしていた。私の肌はどこも柔らかく、水分と油分をバランスよく含んでいる。私のは、表面の弱さを補って硬くなる必要もなければ、老いて欠くこともまだの、若く健全な皮膚だ。
 そこまで事実を飲み込んで、私は返事の代わりに四つ目のボタンを外す。
 彼は頬を撫でていた親指で私の唇をなぞると、そっと口の中へと入り込ませてくる。
 私はささくれた親指を噛み砕かないように甘噛みして、舌で歯の外側へ、頬へ誘導してやる。
 すると指は引き抜かれて、入れ替わりのようにまたキスをされる。今度は唇の隙間に浅く舌が入ってきたので、私も応えて、軽く舌を擦り合わせる。
「ねえ、エト」
 彼に声を掛けられて、私は食事中の哺乳類のように無防備に「ん?」と簡単な返事をする。
「体のそれぞれの部位を別々に動かして戦うのって、そんなに難しいかな?」
 問いかけて、彼は私が着ているTシャツをズボンから引き出して、腰や背中に直接触れてくる。
 私はその手の熱さにぞわぞわしたものを覚えながら、一応マジで聞いているのであろうド天才に答える。
「普通はアンタほどできないと思う」
「そうかなぁ」
 納得がてら、彼は私を抱き寄せて、首筋に唇を這わす。
「……ふゃっ」
 変な声出た。
 彼の口が私の首をついばむ中、視界の下方で、彼がベルトとズボンを緩めてシャツを脱ぐのが見える。
 だから私はその体に直接手を触れて、好きなだけ撫でる。
「存外これ、話しやすいね」
 少し乱れた息と共に感想を述べて、私は彼の顔を両手で持って唇を舐める。
 彼の方からは唇全体を押し付けてきて、それから私の目を覗き込んで頷いた。
「うん」
 悪い試みではないかもしれない。



 食事と同じく気を緩める行動で、食事と同じく程よい作業に追われ、食事と同じく快をもたらす行為。あと色々もぐもぐする行為。
 結果的に十年以上になる付き合いに花を添えるなぐさめ。
 何もかも初めてだったが、一線を越えるという感覚はなかった。越えるべき抵抗感も違和感も、一切感じることはなかったのだ。
 それはあくまで、食事の代わりだった。



【晩ご飯デート】

「まきちゃーん」
「……わかりにくいな」
 微妙に不評っぽい呼び方は流して、ソファの背もたれ越しに顔を向ける彼に向けてキッチンの戸棚を指さす。
「読者からの差し入れで日持ちしそうなものとか、カモフラージュで買うお菓子とか、ここに置いとくから来たら勝手にお食べ」
 言いながら、完全に餌付けだなと気づいた。
「ありがとう。今度まだあったら貰うよ」
 彼は暇を作ることに成功すると、時々私の部屋を訪ねるようになった。勿論いきなり来られるのは嫌なので、二度目からは私の携帯に公衆電話から着信を入れてから来るようにさせた。
 しかし置き場を決めた餌がどれくらいその腹に収まるかはわからない。だめになる方が多い気もする。
 私も大概だが、この男は本当に忙しい。ただでさえ予定が詰まっているのに上から新しく命じられればそれも抱えてしまう。出来てしまうから、そうなってしまう。
 そのうちおいそれと会えなくなるかもしれない。
 会えていなくても、私たちはちゃんと目的のために連携できるだろうか。できれば彼が完全に忙殺されるようになる前に、イエスと答えられるようになりたいものだ。
 私は自分のベッドにダイブしてごろごろ転がる。着心地重視の部屋着なのでこのまま寝こけても気持ちよく眠れることだろう。
「キーション」
 ソファで寛いでいた彼を呼んで、ベッドの横をぽふぽふ叩く。
 おいでおいでが通じたようで、彼はローテーブルに眼鏡を置くと隣に飛び込んでき……ぼよんぼよんとスプリングが波打って私の体が浮いた。
「おっとっと」
 なんとか着地して寝返りを打つ。
 仰向けになって彼の方に首を捻ると、彼の手と視線が伸びてきて、私の髪や頬、耳に触れる。
 私はその手の甲に自分の手のひらを重ねた。それから指をからませて、自分のより大きな手を誘導して、唇で軽くはむ。
 ちゅ、と音を立てて手を離すと、彼は待っていたかのように口を開く。
「この間エトのデビュー作を見た」
「読んだの?」
 私がテンポを踏み違えるように食い気味に聞くと、彼は少し置いて小さく首を振った。
「いや、同僚が読んでた」
 私の髪をゆっくり混ぜながら、二呼吸。彼ははたと続ける。
「あ、町でもたまに見掛ける、か。……こうなると俺も読んだ方がいいかな?」
 私は体ごと彼の方へ向いて、白髪が混じる黒髪をわさわさし返す。
「いい、いい。読まなくていい」
 これ以上丸裸にされてたまるか。というのは半分も本気じゃないので飲み込むとして。
「乳を吸わせるようなものだからね」
 耳たぶを軽く引っ張りながら言う。
「だから、アンタは前あげたのだけにして」
 私の子になりたいならどんどん読むといい、とからかうように続けると、彼は遠慮するよと返した。
 私はごろごろ転がって彼の腕の中に収まる。体格差が大きいのでとても収まりがいい。
 顔を上げると、待っていたように彼の方からキスされる。
 一度の接触で私が顔を下げようとすると、彼の右手が私のあごを持ち上げてきた。まだすると。
 素直に目を閉じてやると、彼は小さく息を吸って、そのままの口で私の口に浅く入り込む。
 息継ぎこそ許してくれるものの、最強の捜査官殿の腕に力が入ってきた。このままずっといたら、いつかは抱き潰されそうだ。まあそれもいいかとこちらからも何度も唇をついばんだ。
 唾液の味に食欲を刺激されていっそ食べてしまいたくもなりながら、そういえば聞いたことなかったなと質問してみる。
「有馬殿は普段、本は読むんで?」
「一応」
「じゃあ、どんな……」
 一言の返事に更に質問を重ねようとするが、途中ですかさず唇を押し付けられる。
 続けて密着したままの唇を舌で割られ、ぐいぐい押される上に続けざまに今度は吸われ、痺れたままの舌を絡め取られた。
 待て待て。話ができない。リソースをキスに割きすぎだろう。蟹食ってんじゃねえんだぞ。私食ったことねえけど。
 一応呻いてみるものの、まだまだ言葉を潰され続ける。それは私がものを言うのを諦めて、大人しく目を閉じるときまで続いた。
 大きなため息一つ挟んで、私は察しがついていながら直球の確認をする。
「……もしかして、話したくない?」
「あんまり。掘り下げて聞かれそうだから長くなりそうだし、それに、」
 そこまで言って彼は私の前髪に口元をうずめて、ひそひそ話のように囁く。
 なんか、恥ずかしい気がする。
 私はこみ上げるままにくすくす笑う。可笑しいし、すこしだけ愛おしい。略して言うとちょっと可愛い。
 有馬貴将は読書家か、そうでなくてもその気質の持ち主らしい。種類は、乱読家以外のどれか。
 読む本の傾向に自覚できる偏りがあって、なおかつ内面に根差していなければ、躊躇や羞恥など感じるはずもないのだ。いくら私の洞察力が優れていることを、彼が知っていても。
「そんなに笑うことかな」
 納得行かなそうにしている彼の肩を押して寝返りを要求すると、私はそのまま上に乗る。
 そしてまぶたにキスをしてから、耳元で囁いた。
 言えるようになったら、私のとっておきの本棚を見せてあげる。



【夜半のサシ呑み】

「ありまきスカルチノフ」
「長いな」
「じゃあ、スカルチノフ」
「誰?」
「わはは」
 あだ名の話がしたかったわけじゃないので軽く流して、私は自分が座るベッドの前の床を笑顔で指差す。
「座って」
 彼は無に近い表情を、ほっとしたような怖がるような形に若干寄せて、ちょこんと正座する。
 でかいのにそんな座り方をさせたことでほんのり満足しそうになりながら、私は尊大に腕を組んでみせる。
「もうちょっと容赦ってもんはないの?」
 笑わないように必死にしかめっ面を作る。
「あれくらいしないと怪しいだろう。それにお前は逃げるだけでいいんだし」
 ぎこちなく、大根役者は言い訳の仕種を真似る。
 つまりはつまらないごっこ遊びだった。
 私は大袈裟にため息をついて、欧米のコメディ俳優もかくやの「やれやれ」をやる。
「今日は許してあげる」
「ありがとう」
 そこまでの遣り取りが終わると、彼はのんびり立ち上がって、私の隣に腰掛ける。
 そして何故か、私の頭を撫でくり回す。
「…………」
 理由はわからないままにしておくけど、涙がこみ上げそうな気配があった。
 胃の底を濡らしただけで引いていくそれを追う気持ちには、苛立ちや破壊衝動だけが立ち込めている。
 私は、
「エト」
 名前を呼ばれたと思ったらベッドに倒されて、口を口で塞がれていた。
「今日は何の話をしようか」
 私は両腕をベッドに押さえつけられて、軽い万歳の姿勢になる。勿論振り解こうと思えば振り解けるけど……それは野暮ってものだ。
「何の話がいいかなぁ」
 ぼんやりと、デザートの注文に迷うように口ずさむ。
 お互いの動きの打ち合わせには、まだ詰めてない部分はあった。そもそもこの間功善を奪取したときの私と彼は半年ぶりの対面で、会えない間は周りにいる人たちとの伝言で何とかしていた。もっと情報の再確認とか作戦の練り直しとか、することはある。
 だけど『お食事中』の私たちは暗黙の了解として、そういう話はしない。
 私が考える間にも彼は私の首すじから鎖骨まで軽くついばんで降りる。高い鼻がとんとん当たって、鼻息のせいでくすぐったい。
「ねえ、甘い物にしょっぱいものをかけると、どんな味がするの? 相殺されるわけじゃないんでしょ?」
 聞いてみれば、彼はシャツを脱ぎながらうーんと小さく悩む。
「……前も似たような相談されたけど、俺に食レポは向いてないよ」
「でも私よりは知ってる」
 私は体を起こして、彼の足の間から自分の足を引っこ抜くと、正面に座って自分のティーシャツを脱ぐ。
 よっこいしょーいち。
 肌着も一緒に脱げたので一緒にベッド横に落とす。ブラなんぞ家でつけていたくないので上はもう全部脱いだことになる。
「喰種も甘いとか酸っぱいとかは言うけど、それが本当に人間と同じ『甘い』や『酸っぱい』なのかはわからないもの」
 そう言いながら私は、人間側の味覚を持つ彼の口に無遠慮に指を突っ込んで舌を引っ張り出す。
 彼は従順に舌を出したまま口をきこうとして失敗して、私の手を片手で解く。
「誰だって多分同じだ」
 私は混ぜっ返されたことにご機嫌具合を傾けながら、彼のズボンのベルトを勝手に外す。
「あなたの青い空は私には血よりも赤い……とか、そういうことでしょ。でもそういう話じゃない」
 クオリアの話はしてないのだ。
 私は顔を上げると、再び彼の舌を指でつまんで軽く爪を立てる。
「いはい……」
 痛い、と。彼の反応に満足して、私は指を離す。
「辛味は多分共通なんだけどなぁ」
 でも辛味《痛覚》だけわかっても、流行りの塩キャラメルだの塩バニラだのの味は描写できない。また塩野に根掘り葉掘り聞いたり雑誌の食レポを読み漁ったりしなくてはいけないのだ。
 私は下も全部脱ぎ捨てて、これもまたベッドの横に投げた。
 すぐに、私が脱いだ服の上に彼の服もどさりと重なる。服と服の重なり合いを模すように、彼は私に身を擦り寄せて口を吸う。
 触れ合うのは実に七ヶ月ぶりで、忘れていても不思議じゃないと思ったのに。彼の肌の感触はよく覚えていた。
 よくわかった。
 ……全然老けない癖に。
「この三十路野郎」
「いたた……ただの事実だな」
 頬を引っ張ってやってもされるがままの彼に無性に腹が立つ。
 されるがままついでにとことん受け身になって貰おうか、と、私は黙って彼の股ぐらに顔を埋めた。
 邪魔な長い髪を手で抑えて、彼のを口に含む。唾液で包むように、えづく寸前までくわえ込んで、舌を添えて口から出した。
 一度出したあとも口で手で、味わうように続けていく。
 実のところ臭いも味も好きではない。殺したときは一応全部食べることもあるけど……イメージが悪いせいもあって、正直、あんまり美味しくない。食べるときも他の部位と一緒にミキサーに突っ込むのが常なくらいだ。
 美味しくないのに何でだろうねーと疑問を投げ飛ばしながら、私は彼の反応のいいところを攻め立てる。
「……っ、意地が悪いな」
 言いながら彼が私の側頭部に手を添えるものだから、私は視線を上げて、不機嫌に目を細めてみせる。
 何が意地悪なのかわかりませんけど、されるがままってことはイイんじゃないですかね。
 私は彼のを舌と唇で包むようにちょっと激しめにする。口の中で空気が圧縮されて不細工な音を立てるけど知ったことか。
 赫子の扱いに於いて想像力がモノを言うように、セックスでも知性がモノを言う。だから私も彼もすぐに、会話を続行できる程度の加減を覚えたし、逆に黙らせる方法も覚えた。
 今だって、彼のは私が望む通りに、体液を一気に吐き出した。
 私は自分の唾液と一緒にそれを啜って舐めて、ささやかなおやつとする。
 そういえばなるべく人を食べずに生活することを望んで性産業に従事していた喰種の話を聞いたことがあるなぁとふと思い出した。多少はお腹の足しになるとかなんとか。
 ふぅ、と小さく息をついて、私は手の甲で口元を拭う。
 と、彼の手が伸びてきて私の頬を軽くつねった。
「……何、不満?」
 聞いてやると、彼はこくりと頷く。
「俺は入れたかったんだけど」
「別にいいじゃん二回戦か三回戦くらいはやるでしょ」
 人のほっぺをこね続ける彼に言い返してやると、ため息を吐かれた。
「……復活するまで時間が掛かる」
 歳を感じてちょっと笑える告白に私が反応を返す前に、彼が頬をぶにーっと横に引っ張って離す。いたい。
 頬を押さえる私の額に、彼はそっとキスをして、髪を払う。
「話したいことも、これで結構あるんだ」

 それから彼は私の体が感じるところを焦らすように愛撫しながら、彼が引き取った隻眼の子の話をした。
 ひどく錯乱していたけれど少しは回復の兆しが見えてきたこと。それから本を読むのが本当に好きそうだということ。
 私はお返しのように、似たような存在を作ろうと協力している医者のことや、日々のことをつまんで話す。
 医者も、日々関わる連中もやっていることは大概ド外道なことが多いし、私のすることも同様。だけど彼は私たちを否定はしない。
 私と違う部分の多い彼は、私のやること全部を認めているわけではないだろう。奪うことしかできない自分の生への意識から、そして自分もしている酷いことから、責めることができないだけで。
 ご無沙汰すぎてなまっていた私の体がもうすっかりとろけ出した頃、私たちはやっと性の凹凸を埋める。
 私と彼のセックスは、実は毎回きちんと避妊をしている。最初の日はコンドームがなかったので最後までしなかったし、それ以降は用意を欠かさないようにしていた。
 交流のための手段として利用しているだけの行為で妊娠したら笑えない。
 私のような余剰がこの世に産み落とされるのは、不幸以外の何者でもない。
 それに、口にしたことはないけど私も、きっと彼も、恐れていた。
 半分同士が交わってできた子が、どんな出来損ないか。
 私は彼の膝の上、いつもの定位置でそんなくだらないことを考えていた。
 ゆっくりと、ゆっくりと動いたり、動かなかったり。愛撫したり、ただ触っているだけだったり。キスをしたり。
 私たちは、七ヶ月の空白を埋めるように、ごく普通のおしゃべりをした。



【お夜食と朝ご飯】

「有馬記念くんいますかぁー?」
 一種の賭けだったが、公衆電話から彼の自宅の固定電話に掛けてみたところ、タイミングがよかったようで繋がった。
 しかし時刻は午前三時半。ごたごたから暫く経った今、家にいる確率はそれなりに高かったが、その分寝ている確率も高い時間だ。
 実際、受話器の向こうの彼は寝起きの声でぼんやり応答する。
『…………馬券、なら……JRAに……?』
 私は笑って、本題を切り出す。
「さいごにもう一度、話そうぞ」
 生えたてのあんよで、私は初めて、彼の部屋を訪れる。

 彼の部屋を一目見て、私はあまりにみじめったらしいその空間に好感を持った。
 最低限の家具や衣類はあるのに、『何もない』と言いたくなるくらい、生活感というものがない。なのに所々に人間味ある品が置いてある。
 誰かからの贈り物だけが、大事に掛けられたり、眺めるためなのか机に置かれたりと、それぞれの位置で異彩を放つ。
 まるで鴉の漆黒の羽の中に無理矢理他の鳥の羽根を埋めたような風景だ。
 ドアホンを使うのも面倒だったので鍵をテキトーに開けて勝手に侵入している私は、キッチンでコーヒーをいれている彼に、歌うように挨拶する。
「オハヨーハヨー」
「おはよう」
 寝ぼけ眼の彼は淡々と返して、コーヒーカップと湯呑みにコーヒーを注ぐと、コーヒーカップの方を私に寄越した。
 キッチンで立ち飲みする気らしい。習慣が透けて見える。
 私も彼に倣って、流し台に軽くもたれてコーヒーを飲む。
「こうして会うのも、嫌いじゃなかったよ」
 口元を湿らせ、温める湯気に誘われるように、そんなことを呟いてしまう。
 彼は静かに、私の肩にくっついて、頭をこちらに傾けた。
 身長差がありすぎて全然寄りかかれてはいないが、甘えたいのかもしれない。
 私はため息ひとつ挟んで、片手でぐいぐいと彼の頭を撫でる。真っ白な頭髪は見事にパサついていて、終わりを連想させた。
「“色とりどりの花ですら色を失うほどの眩《まばゆ》い陽光。広がる暈。あなたの翳りだけを残して、景色は白く塗り潰された。唯一希望と呼べる、モノクロの景色。”」
 私はいつか、唯一彼に渡した本に収めた一節を口ずさむ。
 彼が無言のままいるので、私はそれを、最後まで言い切った。
「“おめでとう。誕生日はもう来ない。”」
 目を上げると、彼は私のまぶたにキスをして、まだ中身が入っている湯呑みを流しに転がした。
 仕様がないのでまた倣ってやると、彼は意を得たりとばかりに素早く私を横抱きにして寝室に移動する。
 私はベッドに寝かされたかと思うとすぐに腕に閉じ込められて口を吸われる。彼の匂いが心地よくてそのまま続けたくなる。しかし、いつもより性急な態度に翻弄されながらも私は待った待ったと肩を叩く。
「ありまっちょ待ってごめん。ゴム買って来るの忘れたんだけどある?」
 するとそれを聞いた彼は私の首元に額をすり寄せて、ややあって、いやいやをするように首を振る。
「……さいごくらいこのままじゃ、だめか?」
 さいごと言われて同情心も沸かないでもないが、しかし私は否と答える。
「私はアンタと違って、上手く行っても百パー死ぬわけじゃないでしょうがっ。それに、残るなら、あの子を見てやらないと」
 生きていく限り、出来うることを、何でも。それが私の望みであり、責任でもある。
 特に新しい隻眼の王に対しては……彼と違って『親』をやるのは無理だろうが、私自身カネキ君のために何かしてはやりたい気持ちもある。
 そのとき私の腹に子供がいては邪魔だ。ただでさえ不幸な存在が更に生まれる前から邪険にされるなんて、そんな最悪な事態の可能性をみすみす増やすわけにはいかない。
「買いに行ってくれるでしょ? 隻眼の王」
 駄目押しにと言い聞かせると、彼はそのままの姿勢で大きくため息をつく。
「わかった」
 そして体を起こすと、しれっと整理ダンスからコンドームの箱を取り出した。
「おまえ…………っ」
 私は怒り出そうとして何故か笑ってしまう。おなかいたい。
「あーはいはい、かわいいかわいい。よしよし」
 私はぴょんと起き上がって、ベッドに戻ってきた彼の頭を、さっきよりかなり乱暴にわしわし撫でてやる。律儀に頭を下げているのが可笑しい。
「かわいいついでに、」
「だーめ」
 もう一声、みたいなノリでちゃっかりさんのようなことを言おうとする彼の言葉を遮って、私は彼のもう見えていない方の目を舐め上げる。
 眼球の食感ってクセになる。喰種の間でも大抵美味しいおやつ扱いで、子供たちにも人気だし。
 よくノロさんもタタラさんも私に目玉をくれたものだった。大人になってもくれた。私が小さい上に子供っぽい振る舞いをするから、甘やかしたくなったのかもなぁ。
 懐かしい思いに浸りながら調子に乗って舐め続けると、彼が私の両手首を掴んで止めてくる。
「エト、俺もやる」
 真似っ子か。
 ツッコミたくなって、私はまたけらけら笑う。なんでこの人、私より年上なんだろう? 時々子供みたいな顔をして、子供みたいなことを言う。
 彼が私の両の頬を手のひらで包んで、そっと舌を伸ばす。ゆっくり味わうように、私の瞳の上を影が滑る。
 舌が目を覆う感覚よりも、熱い呼吸がまぶたに掛かる感覚の方が大きく感じられて、私はすぐに笑うことができなくなった。簡単に体が熱くなって、頭の芯が優しく温められて。まるで愛されているみたいで、逃げ出したくなった。
 彼はほどほどのところでそれをやめると、今度は首筋に唇を這わせて細かく吸っていった。キスマークつきそう。
「最近さ、昔のことを思い出すよ」
 気持ちよくなりそうでいてまだまだくすぐったいばかりの触覚に耐えながら、私はぽつりと口にした。
 歳を取ったのか、何なのか。私は最近、ふいに昔のことを思い出してしまう。まだ守られていた頃のこと、騙した人突き落とした人、気まぐれに助けた人、なくしてきたもの、小説を書いていた夜のネットサーフィンで一度だけ見た動画のこと、いつか迷い込んだ道のこと、色々と。
 彼は何も言わない。
 私はため息ひとつついて、子供のおねだりのように小さく乞う。
「ねえ死神、お話して」
 彼の背に回した手に力を入れて、シャツを絡ませるように指をくっと曲げて、しがみつくように締めてもう一度言う。
「ちゃんと私と話して」
 私が力を緩めると、彼もつられたように抱きしめるのをやめて、私たちは体を離す。
 彼は悩む分の時間で私の服を脱がせにかかる。時間稼ぎのように、ゆっくりと。
 それから彼は、私の体をそっと倒して鎖骨に口付けてから、やっと自分のシャツを脱ぐ。
「タケに、後のことを任せたんだ」
「うん」
 私はただ、静かに相槌を打つ。そこまではとっくに聞いて、状況も大体知っている。だから、続きを待つ。
「……引き受けてくれて、本当によかった……」
 心底ほっとした様子で大きく息を吐いて、彼は私の肩におでこを乗せた。
「私たち、これで結構、恵まれてたね」
 私は、カーテンの向こう側で輝く月を見上げて、認める。
 間違いだらけだった。存在から始まって、何もかも。よりマシな間違いを選ぶことしか出来なかった。敢えて最低な間違いを選んだことだって数え切れないほどだ。
 それでも私にも彼にも、ついて来てくれる者があったのだ。
「このクソったれ世界を滅茶苦茶に直してやりたいんだよ、か……」
「懐かしいな」
 彼が呟いたいつかの言葉に、私は目を細める。
 彼は私の唇に口付けて、反論するように言う。
「いつも思い出すよ」
「私もだ」
 笑って、私は彼の首に腕を回して、唇を合わせる。混ざりあう唾液がいつもより甘いような気がして、舌を伸ばして深く味わってみる。
 同じように返してくる彼にとって、今のキスはどんな味がしているんだろう。
 何度も頬に掛かる息を感じて、私はやわらかな酩酊を引きずりながら、離れていく唇の距離を受け入れた。
 彼はキスの続きのように胸に吸いついて手でもふにふにやってくるので、私は一瞬息を詰めながらも、ふーっとお喋りの続きをはじめる。
「しっかし、こんなに長い付き合いになるとは……」
「本当にな。目も見えなくなるし、寿命も近づいてくるし、正直すごく焦った……」
 フライングお疲れ会のような会話を続けながら、お互いの触覚に心地よさも自分勝手もまとめて食べさせ続ける。
 食い合って抱き合って、果ててもまたのぞんで、そんな中。
 彼の膝の上で、見上げすぎて首が痛くなるくらいキスばかりしていたら、ふいに彼が不安を漏らす。
「カネキケンに…………いや、ハイセは、足り得てくれるだろうか」
 私の肩で俯いて。存外繊細な性根の死神は、ともすれば自身の身勝手さにも感じるところがありそうだ。乱暴者代表の私の爪の垢を煎じて飲ませてやりたくなる。
 自分だけで出来ることに限界があって、最終的に私たちは、託すしかない。
 託す以上、祈るしかない部分が多すぎた。
 だからこそ。
「大丈夫、お前はちゃんと殺してもらえるよ、貴将」
 せめてそこまでは。何の保証もないけれど、信じきった気になって言ってやる。
 私は叶えてやれなかったんだよなぁ。そんな言葉を飲み込んで、唇の端を上げる。
 すると彼は、私にはっきりと微笑んだ。
 言った甲斐あったなぁと満足感に浸りつつ押し倒してやろうとしていると、彼は続ける。
「やっと、普通に名前を呼んでくれたな、エト」
「え、そこ?」
 会心の一言への反応が不服で、かつ意味がわからない。私は疑問に飽き足らず、異議ありと指を突きつける。
「私とアンタってそういう部分に期待する関係じゃないでしょ」
 すると彼は首を捻って、いやでも、と弁明する。
「考えてみたけど、俺とエトってやってること恋人に近いよ」
「ええぇ……そりゃやることやってるけど」
 実践というか若干腰を揺らしながら呆れて物を言うと、彼は首を振る。
「時間を作ってでもゆっくり会って、食事……の代わりのことをして、他愛ない話をして。甘えて。そういうのって家族か恋人に近い気がしたんだけど、違ったか?」
 彼は私を真っ直ぐ見下ろして、小首を傾げる。片方見えていないことを忘れさせるような両の視線に射貫かれて、私は最高に浮き足立って吐きそうになる。
「マジかー……」
 もうマジかとしか。
 いや待て、確かに…………うっわー、マジだぁ……。
「本棚見せたときより恥ずかしーいーぃー」
 素で照れてしまいそうなのがあまりに柄じゃなさすぎて、私はわざとらしいしなを作る。
 彼は全く意に介してくれずに、そうだなと重ねる。ボケ殺された。つらい。
 私は拗ね気味に彼の鎖骨辺りに頭突きをかます。
 すると彼は苦笑を漏らして(誰のせいだよ)、私の顎を持ち上げて唇を重ねる。
 もう、いちいち彼の言い分を気にすることすらアホらしくなって、私はそれを受け入れた。

 徹夜明けにはつらい朝日の中、私は彼の部屋を出て行く。
「あ、そうだ」
 私は開けたドアの側で振り返って、思いついたままを口に出す。
「私が髪切るとしたらどれくらいがいいと思う?」
 ついでに髪を自分で掴んでみる。うん、出来れば最終作は会見とか開きたいけど、そういう場に出るにはちょっとなぁ……もさもさしている。
 彼は意外にも悩まずに答える。
「出会った頃くらいの長さかな」
 そして視線を外して、本気にしなくていいんだけど、と前置きして続けた。
「あの日、お前のことを綺麗だと思った。それが理由まで聞きたくなった切欠のひとつだったかもしれない」
「なるほど。そういう手も有効だな」
 確かにイメージ戦略は重要だ。
 私は頷いて、そのままドアをすり抜けていく。
「あの世でも鉢合わせしたらまたよろしく」
「ああ」
 さいごだけど、無理に笑い合うことすらしなかった。
 早くも遅くもなく閉じるドアの隙間から、私たちはごく普通に手を振った。

 恋人のようなきょうだいのような(家族のような)赤の他人のようなともだちのような、かわいいぼくの共犯者。

おまけ:表紙的イラスト(気に入ったので)

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