「…………ふう」
やはり何も見えない。
あたしはひとつ息をついて、残りの食糧を手探りで確認する。
トリオン体で食べることを考えても、なんとも心もとなかった。
もう投げ出してしまおうかとも思う。換装を解いて体への気遣いを忘れれば、それだけですぐに雪の中で冷凍肉になれる気候だ。
それでもやっぱり、あたしは構えに戻る。換装も解かない。
せめて最後まで、スナイパーでいたい。
白い暗闇に目を凝らしながら、チームメイトたちの顔を思い出す。二宮さんの背中を思い出す。綺麗な小惑星が舞う、幸福な戦場。
あたしはかなり肉薄されるまで、その人影に気づかなかった。
雪中迷彩を着込んだ人間の姿は、目視で見つけづらい。
そして、ここはあまりにも静かすぎて、音も聞こえない。
だから、
「…………」
息を呑む。
近づかれすぎた。そのせいで、背格好だけで判別がついてしまった。
「……二宮さん」
やってきた何人かのうちの一人は、あたしの隊長だった人だ。
あたしはアイビスを抱えたまま、動揺して座ったままで転んでしまう。
すると編隊のうちの誰かが気づいたのだろう、様子が変わる。
やがて小さなアステロイドが、木の前に作った雪の塚だけを器用に壊した。
微かなトリオン漏れだけ起こしたあたしは、観念して両手を上げて、立ち上がる。
視線を上げると、二宮さんは他の誰より早く雪を掻き分けてこちらに向かってきていた。
永遠のような十数歩ののち、あたしの耳に二宮さんの声がやっと届く。
「鳩原!」
二宮さんの表情が見えて、手が肩に触れて。
あたしが何を言うかを迷う前に、足腰は勝手にくず折れて、言葉は口をついた。